時々映画カフェ

映画・読書・音楽

休日はどのように過ごしますか?
久々に映画を観て心にジーンときた作品が有ったので、今回は紹介します。

この作品のお勧めは
心が疲れている人
人生について考えている人
などです

つみきのいえ

この作品は2008年に発表された日本の短編アニメーションです。今から14年前の作品です。

絵のタッチは外国の絵本の様な感じがしました。全編主人公の老人は喋らず物語が進んで行きます。
無声映画は久し振りで、それだけでも最近のアニメには無い作風です。

ここから同作のネタバレになりますので、興味ある方はここでこの記事を読むのは止めて下さいね。

積み上げていく

同作のウィキペディアなどで調べるとストーリーなどが分かるでしょう。ここからは私なりの考察もいれて話を進めます。

いつの時代は定かではない

それは徐々にだけど、ある日を境に世界が一変するのでした

住み慣れた場所が水没していくそんな世界…

主人公の老人は今は一人煉瓦で作り上げた家に住んでいる。まわりは海なのか見渡す限り水面に数件の家が見えて、主人公以外はいないようだ。
かつて家には妻と娘と一緒に暮らしていた。

老人はその日その日を気ままに暮らしている。あることを気にしながら…

それは「更なる水かさが老人の生活を侵食していく」こと
この世の中では、連絡するとどこからともなくレンガやセメントなど必要物資は届けてくれる

老人はいつものことの様に家の屋根上に「新しいレンガを積み上げて新しい家を作る」のである
自分で出来る内は何でもする、この世界の習わしのよう
そして時間を掛けてレンガを重ね家を作っていく…

落とした先に…

老人は煙草のパイプを愛用している。
ある日いつもの様に自宅内中央にある扉を開きその下にある海(あるいは湖?)に釣り糸を垂らし食事の獲物(魚)を釣り始める。

この生活はいつから始まったのだろ?
このあたり一面が水没した時に始まったのか。
そんな思いはさておき、釣れれば食卓に上がり坊主なら別のもの。日々の糧を得るのは大変である。

そんな生活の中、ある時不注意から扉から、愛用のパイプを落としてしまう。
「あ!」と思った瞬間、パイプは水中深くやがて見えなくなる程沈んでいく。

時間が経ち、定期的に老人宅に訪れた行商?らしき船がやってくる。そこには様々な商品があるようだ。はじめは無くしたパイプの代わりを探していたが、しっくりこない。
商品の陳列の中に潜水服を見付ける。
次のコマでは購入したのであろう、潜水服、酸素ボンベを背負った老人が描かれる。

扉を開き水中へダイブ
下の階にゆっくり潜水していく。
するとその景色から老人の脳裏によみがえる光景が映し出されていく…

忘れていた光景

水没した自宅には当時使っていたモノたちが埋もれている。そして、周囲を見渡すと
かつての記憶が蘇ってくる。そこでは一緒に暮らしていた妻との思い出が…
ベッドに寝ている妻に食事介助をしているシーンから
妻は老人の夫に介護を受けているようだ。

老夫婦やがて訪れる黄昏時がそこにはあった

更に下の家に潜っていく…

次に思い出されたのは、娘夫妻と孫そして、妻と一緒に家族写真を撮る瞬間。
老人は今より少し若くなる。
そう、回想なのだ。

更に下に潜ると落としてしまったパイプを見付ける。
パイプを拾い上げて、周りを見渡すと娘が初めて彼氏を連れてくるシーンが蘇る。

照れくさく、何だか苛立ち、そして寂しい表情

側には笑っている妻が娘に紹介された彼氏とそこには老人でない若い頃の自分が握手する。
こうして下に潜るにつれその時代を過ごした家が佇む。
やがて一番下に降りてくる。

自宅から今は水中底に出てみる。老人は潜ってきた我が家を水面に向けて見上げるシーン
幾重にも積み重ねてきた我が家
それはまるで
「つみきのいえ」

ふと老人が子供だった頃の記憶が。当時は水も何もない草原。そこに一本の大木があり、少年の頃の自分そして子供の頃の妻(幼馴染のようである)が大木をバックにそれぞれの成長していく過程を走馬灯の様に描いて物語は終えエンドロール。

エピローグ

人生は儚くそしてその瞬間瞬間がまるで宝物と感じる。もちろん良い時も悪い時もある。何かと生きずらさを感じる昨今、私も人生の積み木がどのあたりまで積み上げたか分かりませんが、この作品を通して、これまでの出来事が思い出されるのでした。

今現在辛い思いをされている人。かつての善き日の邂逅や回想に浸っている人。きっと観る人それぞれにこの作品が持つ意味を捉えられるのではと感じます。


時間は静かに流れます。これはこの世で生きて行く中でどうしようもない理です。
作中の主人公の老人は、置かれている状況下で淡々と毎日を過ごしています。きっと今なお続く水没や老いによりいつ死ぬかもしれぬ恐怖が常に脳裏を過るのだと推測します。けれど、作中からは微塵も恐怖についての描写は無く、落としたパイプを拾いに行く過程から忘れていた(意図的に忘れていた?)昔から、今の自分に語り掛け忘れかけていた何かを拾い上げたのかもしれません。

インフォメーション

〇監督:加藤久住生
〇脚本:平田研也
〇音楽:近藤研二
〇公開:2008年10月4日
〇上映時間:12分3秒

つみきのいえ(プレビュー)


興味ある方は、現在アマゾンプライムにUPされています。また上記YouTubeから購入またはレンタルすることで視聴できるようです。
原作は絵本(白泉社)として販売されています。絵本で楽しみたい方もいると思います。楽天市場、アマゾンからの購入も出来ます。作品を観ながら昔を懐かしむのも良いのかと感じた一作です。

今回はここまで
最後まで読んで頂きありがとうございます
次の記事で会いましょう。

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