ホーム大喜利#12

介護・福祉

私の働いている場所は、認知症高齢者9名入居しているグループホーム。
それぞれに抱えている病、個性、周辺症状などに違いがあります。

毎日元気良く暮らす中、入居者等の行動を見守ると日々気付きや発見の連続です。
例え認知症になっても、その人らしい生き方のサポートについて日々模索中。

さて、今回は恒例企画「ホーム大喜利」です。

今回は「歯磨き」の場面
改めて、日常生活とは日々の積み重ねで出来ていると思い知らせられます。
今回はどんな出来事が起こるでしょうか?
それではどうぞ!!


歯磨きにて

Aさん歯磨きしましょ!!

歯・磨・き?

そうです 歯・磨・き 

どうするか分からない?
教えてーー!!

お口を開いて
歯ブラシで歯を磨いて下さい

こうねー
(既に歯ブラシの持ち方がおかしい)

・・・

この後Aさん笑顔で歯ブラシを口にただ「押し付けたり」歯ブラシをぶん投げたり」振り回すだけ」になります。押し問答の末、結果的にスタッフがAさんの歯磨き介助をしますが、Aさんのその後のリアクションが激しくなり
「ひぇー助けて!!」
「なんでこんなひどい目に合うのー」
とか散々言われた後、決まって

「ありがとうございます」
となります…
歯磨き攻防戦はこんな感じで日頃より繰り広げられています。

考察

Aさん間もなく90歳。今もしっかり歯が揃っていて、もともと歯磨きは念入りにする方でした。
この数カ月の間で異変?から以下の様な様子が見られます。

①歯磨き自体分からなくなった
②洗面所にある鏡に映る自分と対話や手を振るなどの行動が増えた
③体調不良時(便秘・不穏ふおん状態など)に歯磨きが出来なくなる
以上加味して認知症の症状悪化により、歯磨きが出来なくなってきた原因として推察されます。
 
Aさんは脳梗塞より外科的手術を受けてからの認知症発症でしたので、アルツハイマー型認知症とは進行の速さに違いがあります。
一般的にAさんの様な脳血管性認知症の方とアルツハイマー型認知症では、前者が症状進行スピードが速いです。また、脳の損傷部位によっても、中核症状※1と周辺症状※2の出方が変わります。
 
 
※1:中核症状記憶障害見当識障害※3、実行機能障害※4など、脳の神経細胞の障害によって引き起こされる症状。
 
※2:周辺症状は、中核障害の発生で二次的に生じる症状 周辺症状は「本人の性格」置かれている「環境や周囲の対応」と深い関係がある。
 
※3:見当識障害は、脳細胞の損傷より、記憶障害や理解力・判断力の低下などと共に、認知症の中核症状の一つ。時間や場所など、自分が置かれている状況を正確に認識出来なくなる障害。
 
※4:実行機能障害は、計画立った行動をするのが困難になる認知症の中核症状。
 人間は行動の中で無意識に①目標の設定、②計画の立案、③計画の実行、④効果的な行為の模索を繰り返す。これらプロセスが出来なくなる特徴と、主にアルツハイマー型認知症の方に多く見られる。
 
 

対応

前段でも書きましたが、無理に歯磨きを行うと
「ひぇー助けて!!」
「なんでこんなひどい目に合うのー」
となります。


本人の立場(シチュエーション)になり・・考えてみましょう

<洗面所にて>
😱見知らぬ人がいきなりやってくる
😱どことも分からない場所に連れられる
😱何か訳の分からない話をしている
😱まごまごしていると、いきなり自分の口を無理やり開かれる
😱びっくりして口をつぐむ
😱いきなり得体のしれない物を口の中に入れられ、有無言わさず口の中で動かされる
😱動作が終われば、いきなり水を口に入れてくる
😱溺れそうになり吐いた水で服を濡らし、冷たくなりとても恐ろしいーー
 

如何です?これが認知症の方の歯磨きにおける心情の代弁?です。
次にスタッフサイドからの行動も合わせて見ますと以下になります。

✅Aさんを洗面所に連れて行く
✅Aさんに歯磨きの説明・促します
✅暫く様子を見て歯磨きが理解出来ないと認識すると再度説明・促しを行う
✅それでもとんちんかんな行動を数回確認すると、介助する旨伝え歯ブラシをAさんの口へ
✅Aさん口を開かないので、何度も声がけしながら開口を促す
✅少し口が開いた瞬間に歯ブラシを入れてのブラッシング
✅Aさん激しい抵抗に移り、とても歯磨きにならない
✅最後は口の中に水を含ませ食べかすを吐き出してもらう
 

両者の行動・心情(想像も含め)にこれだけの違いがあります。


対応について、嫌がる人に無理やり行うとまず失敗します。そこで以下の様な対応を提案します。

①何回かに分けてチャレンジする
②おだてたり、実施中などほめる(いい気分になってもらう)
③どうしてもダメな場合は、諦めて次回行う(一度や二度歯を磨かなくても死にませんから)


まとめ

今回はAさんの「歯磨き」の場面を通して、Aさんの心情・行動とスタッフの関り方を比較しました。
認知症の厄介なところは、まさにこれまで獲得してきた、習慣・経験などがすっぽり抜けてしまう点です。
本人に説明・促しても、まるで「今まで行った経験が無い」状態になっています。

そんな状況下で、本人が理解・納得していない中で、ある意味強引に歯磨きを介助を行いますが

ある時は、悲鳴を上げ
ある時は、時間が過ぎれば思い出し、普通に歯磨きを始め
ある時は、激しい抵抗になり
そしてある時は、見ている方としておかしな行動(本人はいたってまじめ)
などになります。

歯磨きが終ったAさん、激しい抵抗があった時は、服がビジョビジョになってしまい、その後着替えたり夜なら更衣後そのまま就寝して頂きます。
そんな時でも「ありがとうございます」の一言が出ます。

もともと躾には厳しく、仕事面でも責任感を持って業務にあたっていた方とご家族より聞きます。
そんな性格は常に残っているのでしょう。その「ありがとうございました」から伺えます。


この様な日常生活を繰り返す中、私達スタッフはAさんと洗面所での攻防戦を繰り広げ
「今日もまた新しい一日になっている?」と思うのです。

今回の振り返り

ワンポイントアドバイス

①初めから機嫌が悪い時は無理にしない
②ブラッシングが無理なら、うがいだけでもOK
③激しい拒否がある時は一旦止めて、時間を置いて再チャレンジ
④食事の提供水分(お茶など)でうがい効果とする(お茶は殺菌効果あり)

認知症介護は無理は禁物ですねー。

最後に今回のおすすめ商品

書籍で何か良いものはと調べましたら以下の本が出て来ました。
認知症の方の口腔ケアは難しいですが、知識として持っていると実際の接し方に差が出て来ます。

今回はここまで

最後まで読んで頂きありがとうございました

次の記事で会いましょう。

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