【認知症グループホーム】認知症以外由来の症例を併せ持った方々の考察・対処法 3選

介護・福祉

筆者は認知症グループホームで生活支援している介護士です。

入居している方には「認知症」の診断がついています。これがないと認知症グループホーム(以下ホーム)には入居出来ません。
ただ認知症一つとっても個人の性格・病歴・ライフヒストリー(生活歴)などにより様々な症状が出ています。

今回は認知症なんだけど
「おや!これは何だろー?」と思われる方々の症例を紹介して、この記事を読まれている方の中で

「うちの親も似ている!!」
「認知症にも色々有るんだー」
「これはもはや入居してもいいレベル?」

などの参考になればと思います。

それではどうぞ!!

認知症と一言で言っても様々!!

やはりこれまで関わってきた方々を見ていると精神疾患を抱えている方が多かったです。
精神疾患について様々あり、筆者が接してきた方々からどの様に対応しているかを書いてみます。

症例1「統合失調症」からの認知症

病気の特徴

統合失調症
・一般的に10代後半から30代に発症が特徴
・原因は不明。脳内の神経伝達物質のバランス崩れ・環境因子・体質などに起因と仮定
・症状 
陽性症状(幻視・幻聴・幻臭・妄想)
陰性症状(感情の平坦化・意欲低下)
解体症状(思考障害や奇行)
認知障害(集中力・記憶力・整理能力などが機能しない状況)

厄介な病気です。これまで統合失調症由来の方と接して、現代社会において誰しも過度のストレスなどにさらされていると、ある日突然「朝起きられない」「めまいが収まらない」など原因不明の症状から病院受診後、統合失調症の診断を受ける人が多いのかと思います。そして加齢や別の要因から認知症を発症し統合失調症と併発し更なる症状の出現に本人や家族は困惑するでしょう。

《実際の様子》
①陽性症状の方(幻視・妄想の複合)

Aさん<br>
Aさん

ちょっと!おにいさん
私の子供さっきから見えないけど
どこ行ったか分かる?

筆者<br>
筆者

○○ちゃん
今学校に行っていますよ!

Aさん<br>
Aさん

あら!おかしいわねー
私の背中に居たのに
何だか背中重いのよー
○○背中に居ない?

筆者<br>
筆者

背中は肩こりからですね
あんま・・・名人なんですよ
揉んでみますね…

Aさん<br>(筆者のマッサージで忘れる)<br>
Aさん
(筆者のマッサージで忘れる)

あら!気持ち良いわねー
おにいさん

《考察》

Aさんは90代の穏やかな女性です。
幻視・妄想が出現するのは、決まって真夜中や起床時。また疲労感が出てくる午後などです。
ライフヒストリーより、Aさんは4人兄弟姉妹の3番目。幼少期は何かと他の兄弟らに比較され自分がとても駄目な子供だったと回想されます。
結婚後一人息子で病気がちだった○○ちゃんを授かり、子育て時期は遠い昔になり○○ちゃんも60歳代になっています。
それでも今なおAさんの周りには小学1年生の○○ちゃんは出てくるようです。

《対処法》

言動を受け止める(否定せず、○○ちゃんが居ると仮定して傾聴し職員は俳優になります)
現状を伝える(○○ちゃんが学校などに行って、ここには居ないのを伝える)
要望の確認(心配・不安・確認ごとなどAさんの今の気持ちを確認)
対応
★1○○ちゃんの行動(帰宅時間など)を伝えて安心させる  
★2話題転換(視聴中のTVなどからの情報をネタに別の話題提供で意識を変える)   
★3別件依頼(2の対応が不可時は本人が出来る活動の提供)
《食器拭き・洗濯ものたたみなど》
★4状況転換(肩もみなど提供・レク・リハビリ・散歩など状況・雰囲気を変える)
 
 

まとめ

統合失調症由来の認知症の方は、当初抱えていた統合失調症の症状が軽減されたり、新たな状況としてうつ症状が出てくるのかと思います。
例えば幻視・幻聴が強かった人の症状出現頻度が少なくなったり、その反面無言・無気力状態になっていく方がいます。
要因として認知症との合併症状の強弱や内服薬の副反応など考えられますが、支援サイドとして、日々の本人の言動に注意して接します。

症例2「双極性障害(躁鬱病)」からの認知症

病気の特徴

双極性障害
・原因不明で発症年齢は小児から高齢者まで平均値として30代
・脳内の神経伝達物質のバランス崩れ・環境・遺伝などに起因と仮定
・症状
躁状態:普段より活動的・怒りぽくなるなど行動が大袈裟に 出現は1週間位
うつ状態:興味が無くなり悲観的 出現は3カ月から半年位
③一般的に躁かうつ状態がどちらかに偏る
④自殺率が高くなる

統合失調症と症状などと類似していますが、躁・うつ状態が繰り返し起こり、これに認知症が合併すると
例えば
躁状態の時暴力行為が出ていた方がより暴力的になったり
うつ状態が更に進行し関りを多くしても反応が無く支援に苦慮します。

《実際の様子》
①躁状態(暴力行為にフォーカス
就寝前の口腔ケア時

筆者
筆者

歯磨きしましょう
入れ歯外してくださいね

Bさん<br>(ここまでは穏やかであった)<br>
Bさん
(ここまでは穏やかであった)

歯は返してくれる?

筆者<br>
筆者

洗ったら消毒して預かり
明日の朝に返しますよ

Bさん<br>(突然の豹変に驚く)
Bさん
(突然の豹変に驚く)

何ーー歯返せ!!
ぶっ殺してやる!!

筆者
筆者

明日ちゃんと返しますよ
怒らないでねー

やれやれ
どうしたらこんな風に怒るかねー💦

《考察》

Bさんは80代で感情の起伏が激しいタイプの女性。
普段から感情表現が多彩な方で集団生活に馴染めないため、食事など個別対応(小テーブル使用)しています。
本人が楽しい時には大笑いし、激昂時は小テーブルをひっくり返す程で、周囲に驚きと恐怖感をもたらし場の収集が付かなくなります。
ライフヒストリーより40代位に双極性障害と診断され、この頃から怒りのスイッチがどの場面で入るか読み取りずらかったようです。
怒りのスイッチON状態になる前兆として

Bさんの周辺がうるさい
・昔の嫌な記憶が蘇った後

Bさん周囲にいる他入居者の介助時、謎の嫉妬が心芽生える

などより、突然激昂する頻度が高くなります。

《対処法》
怒りモードになったらその場は止められません。

言動を受け止める(何故怒っているか原因を探る)
現状を伝える(義歯は消毒後返却し没収していない旨を伝えるなど)
対応
★1一旦対応を止める(相手にとって不快な言動の中止)
★2相手の感情を出させ、職員はその間静観する(相手・職員の感情のクールダウン)
★3言動内容により注意・謝罪を求める(他入居者・職員に対して暴力などあった場合)
★4どうしても収まらない時は別の職員が対応する
 

まとめ

双極性障害の由来の認知症の方の対応は、抑えられない感情を放出して頂きます。状況により相手が現実起こった事柄(他者を殴った、物を壊したなど)を認識してもらい、本人の言動について反省を促します。
本人の怒りの感情が減少すれば現状認識し謝罪がありますが、収まらない時もあります。
また認知症の症状が出て、これまでの言動をからっと忘れてしまいます。

「過去の負の記憶は誰しも浮かんでは消えます」が、双極性障害・認知症の病識から負の記憶が引き金になり、言動が暴言・暴力などに発展する傾向も特徴です。

薬物療法が主でありますが、本人の心情を察すると

家族に会えない寂しさ
不本意の中でのホーム生活

これらが爆発の原因としての可能性が高いので、日頃の些細な関り方はとても大切になります。

症例3「発達障害」からの認知症

病気の特徴

発達障害
・生まれつき脳の働き方が独特である
・自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)など
・上記の症状が単独もしくは複数に併せ持つ
・症状
①ASD:言葉や表情・視線・身振りなどから相手の考えを読み取ったり、自分の考えを伝えたりするのが不得手。特定の物事に強い興味や関心を持っていたり、こだわり行動が強い
②ADHD:年齢や発達に比べて注意力が足りない、衝動的で落ち着きがないなどの特性があるために日常生活に支障をきたしている
③LD:全般的な知的発達に遅れはないが「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的能力のうち、一つないし複数の特定の能力についての習得困難や思った通りに発揮できないため、学習的に見て様々な問題に直面している
 
前述の精神疾患とは異なり、発達障害は脳に何らかの機能不全が起こっています。
発達障害はこれまで対応してきた高齢者の方々の時代では大きな偏見や対応困難な場面が多かったので
「あの子は狂っている」
「呪われている」
とかと揶揄され、現代の様な診断など無かったもしくはされなかったため、自宅に閉じ込め人目に付かない対応などがまかり通っていました。また社会で働く時などはかなり冷遇されていたのかと想像出来ます。
 
 

《実際の様子》
①ASDと思われる方
他者の食事介助中 Cさんは既に食べ終わっています。

筆者
筆者

Cさん
そんなに見つめても
あげないよ!!

Cさん<br>(他者の食事を穴が開く程凝視し、指を指したり身を乗り出している)<br>
Cさん
(他者の食事を穴が開く程凝視し、指を指したり身を乗り出している)

あれ!⤴️あれ!⤴️

筆者
筆者

Cさん
もう食べたしょ
TVでも観ていて
(CさんをTVが観れる位置に移動する)

Cさん<br>
Cさん

無言のまま

椅子を戻したり、Cさんの首だけ他者の食事が食べ終わるまで

ロックオンは解けず…

筆者
筆者

やれやれ

この集中力は何処から来るのかね~

《考察》
Cさんは入所時は70代。入所当初よりこれまでの認知症とは明らかに異なる生活全般の様々なこだわりや執着心が強い方でした。
職員の話は聞き入れずホームでの生活で危険行為や不潔行為などをたびたび起こします。
ただCさんからすれば、ホームでの生活は眼中になく、本人にとって当たり前の行動です。ゆえに職員からの対応に拒否感が強く、双方の折り合いは取れません。

「その人らしく関わる」
と福祉業界では良く謳われていますが、現実は修正・拘束などの手段を用いて集団生活維持のために行っているのも事実です。

《対処法》

言動を受け止める(どうしてその行動に至ったか原因を探る 例:まだ食べたりないなど)
現状を伝える(本人の食事は終わった・他者の食事は食べられないなどを伝える)
対応
★1現状を伝える(②に同じ)
★2様子を見ながら他者の介助は続ける(凝視程度なら静観)
★3意識をそらす(職員が離れる時は他入居者の配膳を下げる・本人の座る位置を変えるなど)
★4どうしても収まらない時は別の場所に本人もしくは他者を移動する

まとめ

発達障害由来の認知症の方への対応は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など単体で発症している方とは違います。
前述した特徴を踏まえ

・個人の性格・行動パタンの観察
・本人の行動を先回り(仮説や予測に基づく)

などの対応がより重要になります。
また現在のコミュニケーション能力の把握も必要で、上手く自分の感情表現が伝えられない方に対して
「相手の気持ちを発しやすいシンプルな受け答え方法や環境作り」も大切になります。

まとめ

今回は
「認知症以外由来の症例を併せ持った方々の考察・対処法 3選」
について書きました。

繰り返しになりますが、精神疾患や発達障害由来から認知症になる場合の方が、アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症など単体で発症より多いのかと、これまで様々な認知症患者の方と接した中で感じます。

精神疾患について、現代社会のストレス・食生活の乱れなど後天的な要因が考えられます。これにより、誰しもが精神疾患を発症させるリスクがあることを示しています。
ストレス対処、ひいては自身を守ることでリスク管理になるのだと思います。
発達障害の方は、40人学級中に2~3人はいると言われています。彼らについて誤解や偏見は未だ多くありますが、もし読者の方々の生活圏に該当者がいれば、症状や接し方を学ぶことで円滑な関係性を築けるかと思います。


今回の記事が読者の方の健康状態・ストレス有無・環境を改めて振り返り「今の自分の生活はどうか?」などと考えるきっかけになればと幸いです。

今回はここまで

最後まで読んで頂きありがとうございます
次の記事で会いましょう。

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