日々在宅で認知症のご家族の介護されている方お疲れ様です。筆者は認知症グループホームで今年で9年目の介護士です。
認知症は誰しもなりうる病気です。現在在宅で介護されている方は施設介護を受けている方より多いと思います。理由は様々でしょうが、何かと大変な病気なので家族だけの対応は非常に難しいかと思います。
今回の記事は現在介護中の方や「ひょっとしたら私の親認知症?」と思われている方に対して、日常生活の対応で困っているであろうと予想される対応で、施設介護の実践から筆者の気付きや実際の対応のヒントを綴っていきたいと思います。
⚠️必ずしも認知症を患っている方すべてに当てはまるとは限りません。一介護者のアドバイスとして読んで頂けたら幸いです。
それではどうぞ!!
その1:行動の変化に対応するのが難しい
認知症になるとよく言われるのがこちらです。ポイントを追って考察します。
解説:認知症の方が何をするべきかを視覚的に理解できるように、一日のスケジュールを明確にしてカレンダーやホワイトボードなどを利用して分かってもらうと良いです。
次から施設介護においての実例を基に、在宅でも使える接し方などを考察・提案していきます。
<例>認知症初期の方で繰り返し言動が多い方

今日病院行く日だったかい?

病院は明日だよ!

そうかい!
ところで今日病院行く日だったかい?

カレンダーに〇している日が病院に行く日だよ!

あらそうかい!?
ところで病院行く日はいつだっけ?

だから!カレンダー見てよ!!
この攻防はその後も続く…
✅繰り返し言動に対する介護者の受け流しスキル(聞き流す)を磨ければOKです
とは言え病状の進行具合によりますが、初期の認知症の方には介護者がその場にいない時などに有効です。本人がいつも座っている場所から見えるところにカレンダーを貼ってあったり、ホワイトボードを置いてあると更に良いです。
解説:認知症の方が自分で危険な行動を取らないよう、家中の環境の見直しと安全対策を施しましょう。
<例>トイレ内の環境

トイレ!トイレ!

一人だとあれこれ触って大変!!
トイレットペーパーは一つ
その他は本人が見えるところには置かない

・・・

え!!ちょっと
やめてよーー!!
更に履いていたパンツを流そうになるなど、初期から中期位の認知症の方のトイレの行動は大変です。
トイレが詰まると更なる悲劇が待ってますので…
✅トイレ以外で特に台所は危険要素NO1。認知症からの激昂行動が多い方が同居時は「包丁・ハサミ」など目に付かない所へ保管&料理時など使用中の出しっぱなしはしない
⭐まとめ
「行動の変化に対応するのが難しい」に着目してみました。
実際自宅での介護は朝から夜寝るまで息付く暇がない程、見守りや介助に追われているため介護者には相当なストレスが掛かります。認知症の初期段階は本人の動きはさほど健常者と変わりないため、介護で時間あっという間に過ぎ、介護者自身の心身の負担が大きく掛かります。
介護者が一日中ついてられれば良いですが(それもストレスです!!)現実的には介護者自身の仕事や趣味活動・家事・育児などを抱えていての介護は難しいです。更に独居(一人暮らし)で遠方に住んでいる親御さんが認知症なら心配です。
改めて真っ先に考えて頂きたいのが介護保険を使ったサービス利用です。
具体的には
②ショートステイ
③小規模多機能
①デイサービス・デイケア
利用勝手が良いサービスで「一日・半日など利用時間に幅」があります。更に現在各サービスそれぞれの施設では継続利用のための次のような工夫を凝らしています。
・運動(リハビリ)系
・創作(脳トレ)・行事に力を入れている所
・余暇活動にフォーカスし遊びをメインに捉え、そこからリハビリなどに繋げていく施設があります。
ただこれもよく聞く話ですが、サービス開始して歴史のある(老舗的な)従来の施設は
子供だましの創作活動・運動が主で「行ってもつまらない」と聞かれています。
そんな現状を打破すべく都市部を中心に新たな仕掛けを施した施設が出来たり、老舗デイサービスなどでも活動内容をリニューアルしているところが見られいます。それが
・ギャンブル特化型
・スポーツジム的要素に特化型
・創作活動対応特化型
など本格的な装備を備えた施設です。利用に対して飽きがこない取り組みが進んでおり、現在通所系サービスは都市部を始めてとして飽和状態ですので、特徴のある施設が今後都市部だけでなく地方でも増えてくれればと思います。
最新情報はケアマネジャーが持っています。ご本人に合った施設を探してみてはいかがでしょうか。
②ショートステイ
急な用事(冠婚葬祭、ご自身の気分転換の旅行など)などで、どうしても自宅で介護が出来ない時におすすめのサービスです。
ショートステイ専門施設・老健・特養などで提供され、利用日数は介護保険で決められているのは30日まで。それ以上の場合は一日ごとの実費になります。(施設サイドと要相談)
また利用者数も多いサービスなので、利用する施設は複数あると突然の利用などでは良いです。
このサービスは今後自宅で介護が出来なくなった際の「施設介護」移行時の練習にもなりますので、普段使いで慣れておくのは良いです。
③小規模多機能
施設介護(デイサービス・ショートステイ)と在宅サービス(ホームヘルパー)が合わさったサービス。
デメリット:このサービスを使うと小規模多機能に在籍するケアマネージャに変わるため、これまで担当していたケアマネとはここでお別れになります。また使える介護保険のサービスも福祉用具レンタルなど一部に限定されます。
「必要に応じてヘルパーが自宅に来て介護を受けたり、施設で一日を過ごしたり泊まりが出来る」点です。施設入所に抵抗がある介護者には良いサービスですので検討してみてはいかがでしょうか。
以上が認知症初期からの在宅介護における強い味方です。各種サービスを上手く使って認知症を患っている本人、支えるご家族の心身の健康を保っていただきたいです。
その2:コミュニケーションの困難さ
認知症の種類にもよりますが、脳血管性認知症よりはアルツハイマー型認知症の方とのコミュニケーションが取りにくくなります。それらを踏まえて考察します。
認知症初期から中期以降になるとコミュニケーション能力が低下します。視力・聴力低下は加齢によるものですが認知症の方が視聴力の機能低下だと更に状況を悪化させます。
従って介護者は認知症の本人が受け答え出来やすい質問(YESorNO対応出来る)や分かりにくい説明はNGとなります。
トイレ後の会話

今「お通じ」あった?

「お通じ?」なにそれ!?

トイレで「お便」でましたか?

「お便」?弁当がなんだって?

トイレで「うんち」ありましたか!?

ああ!「うんち」
おいしいねー

日本語は難しい…
同じ意味でも沢山の表現があるからねー😭
✅どうしても聞き取れない、理解できない時は筆談(ボードなどに書いて)で見てもらう
✅介護者本人の語彙力が試される(日々勉強ですなー)
解説:相手に言葉が通じない場合は、ボディータッチ・手話・ジェスチャーなど、言葉を使わずに表情や身振り手振りなどで意思や感情を伝えるコミュニケーションのことです。
<例>トイレにて、耳が遠い方とのやり取り

Aさんここに(手すり)つかまって立ちますよ!!

はいはい!

トイレの方に来て下さい

え!?

こっち(トイレのある左側)ですよ!

あら!こっちね
✅指差しによる今観ているTVの放送内容や別のもの(時計など)から答えを導くのも有効です
⭐まとめ
「コミュニケーションの困難さ」は認知症の中核症状の中でも、本当に厄介なものです。そのため他者とのコミュニケーションはこれまでは当たり前に出来ていたのに、家族はもちろん本人は出来なくなった違和感・葛藤・喪失感などが襲ってきます。
出来ない状況に注目するのでなく、今出来る・出来ていることに目を向けてサポートしたいです。
その3:睡眠障害などの行動変化がある
これまで気にも留めていなかった自分・家族の行動が認知症発症を境に辛くこれまでの生活を一変させます。ここで上げた睡眠障害は最たるものです。
眠りが取れているか否かは生活の質を左右し、ひいては生命に直結します。認知症以外にも睡眠に関わる病気はありますが、ストレスや加齢などにも左右されるのでどんな人でも他人事ではないのです。
<例>睡眠リズムが不安定で昼夜逆転している方
日中のスタッフより夜勤に入るための申し送りから、Bさんは昼間長時間居眠りしていたと報告があります。
夕食後から本格的に覚醒し消灯時間が21時となり、それまで起きていた入居者が一人一人と自室に戻り、Bさんだけがホールに残り眠れない様子です。もともと睡眠障害が有ったため睡眠導入剤は処方されていてこの時間に内服します。
内服後自室に帰り入床されますがなかなか眠れません。その間数回トイレに行き来したり、部屋の片づけなど活動しています。時間は経過し眠れないため本人不安ごとなどが浮かんでは消えるのでしょうかとうとう職員ルームに来て堰を切ったように話し始めます。
「自宅に帰りたい」
「家族への恨みつらみ」
「お金のこと」など
いつもと同じ話を延々とします。
Bさんは耳が遠い方で、そのため声が大きく長時間話していると寝ていた別の入居者が起きてきます。そのうち不眠さんが増えて多数の入居者が夜の睡眠が取れなくなります。
以上が施設における一場面ですが、これが在宅で起きますとご家族のストレス・睡眠障害に発展し、最悪介護における虐待などに繋がる危険性が高くなります。
次は在宅介護において睡眠障害緩和につながる方法を考察・提案してみます。
解消するために医師やケアマネなどに相談して、本人が出来る活動で家族が危険リスクを許容できるものについて再度やっていただくといいです。
②洗濯干し・まとめ・たたみ
③自室などの掃除
④ペットの散歩(家族同行で)
⑤隣近所の散歩(家族同行・信頼関係のあるご近所さんの協力)
すべての活動を止めてしまうと、脳の刺激が無くなり病状の進行が進みますので、出来る活動は残していただけると良いです。
昼夜逆転における最大の要因は、何もしない刺激の少ない毎日です。先述した1に関連しますが、本人の仕事・役割の時間を一日の中に取り込むと刺激が生まれ、結果適度な疲労感より夜間の睡眠に繋がります。
⭐まとめ
「睡眠障害などの行動変化がある」は認知症初期から中期に掛けて大変な周辺症状です。
そしてもっとも恐ろしいものは「火事」など即生命の危険性につながる行動変化です。
✅ポータブルストーブの着火・給油・消し忘れ
✅寝たばこ など
上記についてこれまでの活動をすぐ止めるのではなく、工夫次第で継続出来る活動もあります。
更に喫煙などの生活習慣の見直しも出来るかも。
例えば一人暮らしの軽度認知症の方なら
・ガスコンロからIH調理器に変える
・ヘルパーと一緒に調理する
・調理回数コントロールと配食サービスの併用
・暖房器具の交換(オイルヒーターなど器具が転倒しても火が出ないもの)
・ヘルパーによるストーブ管理
など
最後に
今回は【認知症介護】家族が困っている対応についてのヒント3選として考察してみました。
ご本人の認知症の進行度合いによって周辺症状の出現は様々です。発症前の本人の性格・現状の環境など要因は複数あり、それらが絡み合って困難さに繋がります。
認知症の在宅介護は”長いトンネルを通り抜ける様なもの”と例えられます。
それだけ発症から現在の医療では進行を遅らせる治療しか出来ず、介護する家族、そしてご本人の生活が大変になります。
在宅介護を行う際は、一人もしくは家族だけで抱え込まず、出来れば認知症発症以前から掛かりつけの主治医を見付けておければ良いですね。
そして認知症と思われる行動が出始めたら主治医を通して診断後は、すぐに区役所や町役場などの福祉課などに行って、早期に介護保険の申請交付を行って下さい。
申請後と同時に地域包括支援センターなどに行って、信頼できるケアマネージャのいる事業所(居宅介護支援事業所)を選定し、各種介護サービスを利用し長丁場の在宅介護に備えて頂きたいです。
今回はここまでです
最後まで読んで頂きありがとうございました
次の記事で会いましょう。
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