認知症のイメージ
こう書くと、人によって様々なことが考えられるかと思います。
<イメージ>
・認知症になったらもうおしまい
・何もかも分からなくなる
・とにかく大変!
・あの病気になりたくない
など…
マイナスオーラ一点のイメージが先行するかと思います。
実際入居者と一緒に過ごすと以下のようなことがよく現れます。
①繰り返し同じことを喋る、忘れる
②勝手に他者の物を奪ったり、勝手に食べてしまう
③感情のコントロールが出来ない
④ある時間になると同じ現象が起こる
など…
①について、(短期)記憶力低下、欠如状態から、例えば「ごはんまだ?」などさっき食べたことを忘れ、同じことを繰り返し喋る。また、記銘力が低下により記憶の保持が出来ない状態。
※記銘力とは、新しく体験したことを覚える能力。
②について、脳の部位の損傷などから、自分の物と他者の物の認識が出来ない、もしくは固執が強くなる行動。
③について、脳の部位の損傷などにから、例えば突然怒り出したり、殴りかかったり暴言が出たり、怒りが長時間、長期に渡り持続し制御出来ない状態。
④について、一定の時間になると、そわそわ落ち着かなくなり、突然泣き出し「家に帰ります」などと宣言し、実際ホームから出る行動を起こしたりします。
場所や時間が分からなくなる「見当識障害」などを指す「中核症状」です。
もう1つは、抑うつ・不安・怒りっぽさ・興奮・不眠など、心理面や行動面でその人特有の症状が現れる「行動・心理症状(BPSD)」、「周辺症状」とも言われます。
※BPSDとは、行動・心理症状を表すBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの頭文字による略語。
認知症は①~④以外にも個々に様々な症状が現れ、今まで送っていた日常生活が正常に遅れなくなる病気でして、うーん本当に厄介なものです。

傾向と対策
MCIって言葉があります。
※MCI(Mild Cognitive Impairment)
軽度認知障害。
認知症の一歩手前の状態。認知症における物忘れのような記憶障害が出るものの症状はまだ軽く、正常な状態と認知症の中間と言えます。
高齢の親御さん・高齢の親せきなどと同居・別居より、いつもと違う言動を見たり聞いたりした中で、これらの事柄の出現頻度が増え始めたら、早めの受診が出来ればいいです。
しかし認知症のイメージでも述べましたが、自尊心・社会からの偏見などから、日常生活が出来なくなることへの極度の不安・恐怖から受診を受ける際の足かせになります。
早期受診により認知症の進行を遅らせる治療はあります。症状が悪化して手遅れになってしまうケースは避けたいです。
✅一時的なもの(すぐ出来る対策)
→食生活改善・睡眠確保・ストレスコントロールなどが挙げられます。
✅二次的なもの
→交通事故に遭わないなど、脳に対して直接ダメージを与えないようにする。
✅予防策として、日々の健康管理・定期的な健康診断・適度な運動・生活環境の見直しなどは重要な要因になります。
MCI状態で症状をコントロール出来れば、認知症の発症が防げたり、進行を遅らせ、現在の生活を継続出来ます。しかし、運悪く認知症に移行してしまっても、掛かりつけ医師と相談して薬による症状の緩和や日々の介護内容の見直しにより症状の安定が見られます。
(現在認知症は内服や外科的手術では完治が出来ないものが大半なため)
これまでは、抗認知症薬はドネぺジル(商品名アリセプト)だけでしたが、2011年より
✅ガランタミン(レミニール)
✅リバスチグミン(イクセロンパッチ)
✅メマンチン(メマリー)
以上三種が追加されてます。
これらの四種類の薬はアルツハイマー型認知症(ATD)に有効で、認知機能の改善や認知機能障害の進行抑制が期待できます。
✅生活の中で直接関わる介助・介護。一般的にはこちらの方が重要になってきます。この対応を誤ると、本人を中心とした家族間において、大変なリスク状況になります。
生活支援について、よく言われるのが三大介護の「食事 排泄 睡眠」です。
✅施設介護では、入居者の日常生活の些細な言動をチェックしながらデーターを取ったり、対応が不十分な場合は仮説を立てながら対応を考えています。
✅自宅で看る場合は、三大介護を主軸として対応して、介護を受けている本人の言動に対してサインなどを感じ取れると、例えば尿・便失禁について「何故?何?どうして?」の原因がつかめやすくなります。日々の観察も生活支援において大切なのです。
それでは以下の経過より、現在私が働いているグループホームの入居者から日々感じ、上記に記載したことを踏まえた関りについて書いてみます。

◎ケース1:繰り返し同じことを喋る、忘れる
対応:一般的にはオウム返しで、相手が言った言葉をそのまま繰り返す動作を行います。
<例>
Aさん:「ねーお風呂は?」
職員: 「後でね」
Aさん:「後っていつ?」
職員: 「ごはん食べたら」
しばらくして
Aさん:「お風呂は?」
職員: 「ごはん食べたら」
(まーこれを入居者が話さなくなるまで続けます)
【対応策】
”当人の話をある程度まで聞いたら聞き流す”
これが出来ると聞き手のストレスは劇的に軽減します。
(一見ぞんざいな対応ですが、長く病気と付き合っていくうえで必要不可欠となるスキルになります)
◎ケース2:勝手に他者の物を奪ったり、勝手に食べてしまう
対応:もの盗り?取り!に出る方の目の前に、相手が興味を惹くものを極力置かない。食事などの時は、近くに介助者が座りブロックする。
上記については”認知症”と言う病によって引き起こされています。
【対応策】
”咎めたり”してもダメで、いかに上手く”いなす”(スルーする)のがコツです。
◎ケース3:感情のコントロールが出来ない
対応:いつどんな時にこの症状が出るのか予測が付く時と、付かない時があります。日々の生活を観察するとその方特有のサイン(行動の前触れ)があります。
<例>①盗癖(とうへき)
~状況~
他者が絵を描いている
→じーっと見ながら(当人)私も描いてみたい(と思う?)
→他者が描き終わる→絵が置いてあり、その絵をじっと見て、誰もいない様子を伺う
→いないのを確認して(当人)その絵を持っていく(盗んでいく)
~観察~
当人の生活歴などより
もともと絵を描くのが好き
絵を見るのが好き
絵を収集するのが好きなど
これまでの個人情報や日々の言動などから対応の仮説を立てます。
~対応~
他者が絵を描く
①当人にも描いてもらう
②描いてもらった絵を当人に持ち帰ってもらう
(この対応で他人の絵を持っていく行動は防げて、当人の気持ちもある程度満足するのでは?)
~考察~
他者の絵を勝手に持って行く。俗に言う盗癖などの対応では、当人の性格・行動歴・言動など様々な要因が考えられます。
仮説に基づく対応を行い、実施後に問題行動とされていた事象が収まったり軽減、または収まらない。
結果を再度検証し再び仮説を立てて、新たな対応をトライしていく。
<例>②怒り(他者との談笑時など)
~状況~
他者と楽しそうに話している
→(当人)周りが賑やか、もしくは、やかましい(と感じる)(イライラしている)
→さらに他者との会話が盛り上がる
→(当人)いきなりブチ切れる!!
→(当人)他者・職員に対して暴言・暴力を振るう
→一同騒然となり環境が一瞬にして険悪になる
~観察~
当人はもともと他者に対して
依存的
嫉妬しやすい
静かな環境を好んでいる
話している他者や職員が嫌い
など、これまでの状況や日々の言動などから見えてきます。
~対応~
①他者との談話時、当人にも参加してもらう
(この対応で嫉妬心などの軽減になります)
②当人がいないところで他者との談笑を行う
(この対応は環境面で、例えば談話スペースがあるなし、談話スペースが広い狭いなどで出来る出来ないがあります)
③当人が他者や職員を嫌っている時
1他の職員が当人の対応を行う
2別な場所に連れ出して気分転換を図るなど…
(対応出来る人数がいれば良いのですが、職員などの人数不足の環境では難しい)
~考察~
突然怒り出すなどの感情コントロールが出来ない方は、常時怒っている人・そうでない人など様々なケースがあります。
これもやはり当人の性格・行動歴・言動など様々な要因を抑えながら、仮説に基づく対応で問題行動とされていた事象が収まったり軽減したり、見直しになります。見直しはまた仮説を立てながらの試行錯誤を繰り返します。
◎ケース4:ある時間になると同じ現象が起こる
対応:決まった時間前後より起こるこの現象。当人により様々ですが生活歴がヒントになり、当人に対する個別の声掛けなどが有効です。
<例>夕方になると不安になる方
~状況~
15時過ぎから徐々に表情が曇り始め、そわそわしたり不安な言葉を繰り返します。
~観察~
当人はもともと子だくさんのお母さん。仕事や家事をやりくりして、にぎやかに生活していました。現在は疲れやすく心臓に持病があります。
~対応~
(当人)表情が曇りはじめる
①個別対応として不安事などの話を聞いたり会話を多く取る。
(例:散歩に行く。本を提供するなど)
②これらで落ち着かない時は、集団レクリエーションに参加してもらい、強制的な状況変更や話題を変えるなどで気分転換を図ります。
③さらに収まらない時は、家族の協力が必要になり、定期的に家族に面会・外出・外泊を行ってもらうと一時的に落ち着き、症状も収まり確率が上がります。
(やはり”家族の存在”に勝る対応は無いです)
~考察~
夕方になるにつれて、寂しくなる感情が強くなる方は認知症では多くいます。施設に入所するだけでも、これまでの生活環境からの分断・知らない場所・知らない人達との共同生活は、健康な人でもストレスとなりますが、認知症の方にとっては相当のストレスになりその影響は計り知れません。

今回のまとめ
今回の記事は、以前noteにアップした記事を加筆修正したものをブログに載せました。
元記事がこちら👇

認知症について事例など提示して、グループホームの情景など想像しやすく記載し、入居者と日常生活を通して見えてきます。
介護の教科書や書籍、情報番組などで言われている内容を含め、それ以外の事柄は毎日姿や形を変えて起こっています。
”カオスな場所、それがグループホーム”
そんな中でも、笑いあり、涙あり、怒りあり、考察ありありな入居者との残りの人生に寄り添いたいですね😁
ものごと、知っている知らないでは世界がまるで違います。
改めて認知症を考えると、「もし認知症になったらどうしよう?」と不安や絶望になる要素満載です。
ただ残念ながらもし罹ってしまったら現時点では完治出来ない病。故にいかに付き合っていくかがポイントになります。
●在宅介護で最期まで看てあげたい
●介護は子供・連れ合い・兄弟・親(若年性認知症の場合)の義務である…
など願ったり考えがちですが、いずれにしても介護を一人で行うのは大変です。介護側の人生も大きく変わる可能性が高くなります。
すると、それがとてつもない縛りとなり、それまで築き上げてきた親子関係や夫婦関係などを損ね、介護者に負担は計り知れなく、心身の病を引き起こしたり、最悪介護殺人や介護者と介助者の無理心中などに至る事件・事故が今なおあります。
一生懸命に看たい気持ちは十分に分かります。
これまで”大変世話になった、恩がある、当然の義務など”
理由は人それぞれでしょう。
認知症介護は良く”先が見えない”と言われます。
人生100年時代。
平均寿命延長は日頃の生活習慣の向上、医療の進歩によりその傾向は進んでいると思います。
今後は認知症当人・介護家族が幸せになる方法を考えてみたいと思います。次回の記事もよろしければお付き合い下さいね。
今回はここまで
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは次の記事でお会いしましょう。
コメント